アトランシア ステルスカスタム’2015
私はギタ-やベースギターの類を集め始めてからというもの、今さら振り返ると結構な年月が経ちました。世代的にギブソンやフェンダーに憧れて始めた趣味なのですが、当然、国産ブランドにも抵抗がなかったので、今、我が楽器庫を眺めると国産品の割合は高いのです。
実は、今回話題にする国産ベースは、私にとって初のブランドによるものです。振り返ると、これに関連する古いメーカー品が1本だけある。ベースではなくギターでアリアプロ2のSH-1000。SH-1000は、私の昔あったホームページROUTE335では紹介していたけれども、このブログでは紹介していないので、それはいずれ。今回は、PEやSHなどあの時代と同じ味わいを持つギターメーカー、古いマニアの方にはその通り、アトランシアです。私はアトランシアのベースを、中古品で今やっと入手して、弾くことができました。5弦タイプのステルスです。
アトランシアのボヘミアンというモデルを私が知ったのが昨年でした。その頃、自分としては、少しばかりの病気で入院していて、私自身の思惑に反して周囲からマズイような感じの心配をもらっていながら、肺の生検手術の前の晩に、呑気なのことに病床でスマホでベースのことをググっていて見かけたのです。アトランシアは私でも知っている、古くからのメーカ。こんなボヘミアンの6弦は、私としては嫌いじゃないカタチ。カワイイ。自分の残りの時間が限られるなら、こんなベース弾いてみたいものよね・・と思ったのです。
遡れば、アトランシアの存在は80年代からギター雑誌に広告を出したこともあり、自分としては高価であったことも手伝い、そしてカタチが苦手で、長年黙殺していた対象でした。しかし、昨年、ボヘミアンに胸を打った後は、アトランシアのデザインが全てイケたヤツに見えてきたのですね。中古をネットで探しました。当然、新型のボヘミアンのセコハン品はなかなか無いのですが、都内の販売店では幸いに別モデルで何本かあって、それを前回の上京の際に試し弾き歩いたりしました。ネットでポチればいいのだけど、私の価値観では金額的に怖かった。
購入後に知ったのですが、私がお茶の水の大手楽器店で購入したこの個体は、恐らく、2015年冬に大阪の大手楽器店から販売されたもので、あまり弾かれないまま手放され、その時の新品定価よりも高い値札がぶら下がっていたようです。おいおい。でも、良い楽器なので許します。
アトランシアのベースの特徴は、ネックが厚いという噂でした。確かに度を超える程に厚いもので、びっくりしますが、弾いてみると厚いことでの不便はない。逆に、厚くないと満足がいかなくなりそうなのです。
このベースの出音は暖かく、明瞭快活な良い音がします。弾いていてイヤなことが少し忘れられる(私は)。ネックの響きが、いつものベースとは違っていて、生音はジョイント部の周辺から鳴っています。いつものベースではネック全体がトラスロッドの金属感を伴ってモヤ~っと鳴ってるものなのですが、これは無いのです。ボディはウォルナットの裏表、中心材はマホガニー。ベースでマホガニーのボディが使われることはそんなに多くないのですが、私は好きな材です。
コントロールは金色の大きいツマミがマスターボリューム、一列に上からトレブル、ミッド、ベース。右側に外れた1つはPUバランサー。ブリッジはモノレール。弦間18mm。(指板幅は19mmまで許容しそうなので、ここは惜しい。)弦間の調整が効くサドルだったらよかったのにと感じます。弦間の私の好みとしては少々狭いのです。ですが、ネックの太さの関係からか、それほど馴れるのに苦労はないかも。
ネックはメイプル。ステインで着色、つや消しに塗装されたものです。アトランシアの他のベースをネットで調べると、スカンクストライプのような線が2列、ネック裏に存在するものがあり、カーボンの補強材だということです。「カスタム」グレードのものは補強されている・・・というような情報もあるのですが、この個体を当時、新品で扱った小売店のWEBページには「ステルス・カスタム」と表記されているので間違いはないのでしょう。購入した際に、この個体のネックは要調整の状態でした。恐らく、長年弾かれないまま弦を緩めていた結果、逆ソリしていたのだと思うのです、トラスロッドがまるで絞められておらずグラグラの状態でした。入手直後は弦を調律するとネックがわずかに上がってきたので気づきました。なので、現在はトラスロッドを活かして自分なりに調整中です。ネック自体の素性は良いので真っ直ぐに調整はできるでしょう。アトランシアを前に(恐れ多いのですが)密かに腕が鳴ります。入手後1月程経ちますが、そこそこ安定してきたところです。
全景写真では、カッコの良さは感じないのですが、どうやらカッコ良くないと思っているのは自分だけで、これを弾いていると周囲の人たちから「えっ!それカッコいい楽器じゃないですか・・・」と言われます。弾いている限りは、このデザインの癖を感じることはありません。なので、とても良いベースです。正直、もう少し前に食わず嫌いのアトランシアに気付くべきでした。現在はカスタムオーダーの受付が止まり、新品の出荷数が減ったのか、物価高も手伝って新品も中古も高くなってしまっています。10年前なら、中古品であれば、まだまだお小遣いで買える範囲だったと思うのです。
気に入ったポイントを列挙します。まずは肝心な音です。ネックの太さによるであろう木部の生鳴り。木の鳴りを纏ったかのような温かみのある長いサスティン。妙に各弦のバランスが整ったPU。アンサンブルの中の存在感(邪魔にならない)。プリアンプも秀逸です。最初は甲高く感じますが、他楽器と混じるとそのままでいい。続いて、太いネックの演奏性。慣れると、これでないとダメになりそう・・・と皆言っていた世界感で、とても良くわかります。
反対に気になる点は、調律がやりづらい。書くまでもないのですが、ペグと弦の位置関係が体験と異なる。なので、例えばD弦のチューニングを慌ててしたりすると、それがG弦だったりする。チューニングメータを見るスタイルなら問題ないのですが、耳や感触でペグを動かす人は厳しいかもしれない(それは私)。ここは慣れる気がしないのです。てんぱった演奏中にいじることはタブーだ。
そして、前述した弦間ですね。私の好みとしては弦と弦の間の距離が一定であってほしかった。・・・とは言え、この出音を考えれば、そんなことは些細なことのようにも感じます。
この個体は、いい奴なのにあまり弾かれてきた痕跡がありません。この後、私なりにしっかり弾いてみたいと思います。気づくことあれば紹介します。きっと、良い気づきばかりと思います。
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